「ちょお!今日日直なんで急いでるんだけどー!?」
「そんなの僕には関係ないね」



毎朝見られる、先輩と風紀委員長の攻防。
トンファーを振り続ける委員長に対し、先輩は武器も持たずにひたすら避け続ける。
避ける際に先輩は決して攻撃することはない。


……いつ見てもすごい反射神経だよなぁ、と自分の仕事をそっちのけで思わず感心してしまう。
きっとこの学校で――いや、この町で、
あそこまで委員長の攻撃全てを避けることができるのは 先輩ぐらいじゃないんだろうか。


先輩はどうやら委員長と同じクラス、かつ隣の席らしい。
まぁ、委員長が授業を受けることはまずないんだけど……。
そんな、普通にしていれば全く接点のなさそうな二人。
その二人がなぜ毎朝こんな攻防が続いているのかというと、何でも先輩は委員長と賭けをしているらしい。


い、委員長相手に何という恐ろしい事を!と、聞いた当初はぶっ飛んだ。
いまでもまあ、あまりその印象は変わっていないのだけど。

その後、いったいどんなことを賭けているのか聞いて回った。
その結果、賭けの内容は"並盛商店街においての権限"なのだと、副委員長である草壁さんに聞かせてもらった。
どういう経緯でそんな話になったのかはわからないけれど。
委員長が先輩に一撃でも与えることができたら、その権利は委員長に渡ることになっているらしい。

……なぜ先輩がそんな権利を持っているのかは不明だけど。
それにしても、よく委員長がその賭けを承諾したなあと感心する。
そんな賭けを持ち出した時点で咬み殺されててもおかしくないのに……。



そんなわけがあるから、委員長は先輩を見つけるたびに攻撃を仕掛けている。
賭けを開始したのは4月かららしい。

今は初夏。

ということは、先輩はまだ一度も委員長の攻撃を受けていないということなのだろう。
凄い……自分ではきっと一瞬だろう。


そんな二人の攻防も、今では並盛中の風物詩だ。
生徒も教師もいっこうに気にする様子がない。
それどころか、教師も巻き込んで学校全体で密かにどちらが勝つか賭けが行われているらしい。
もちろん、そのことは委員長もご存じだが、害はないと判断したのか放置している。



キーンコーンカーンコーン



あ、チャイム。
その音でさっきまでの委員長の猛攻撃がピタリと止まる。
協定により、攻撃を仕掛けていいのはチャイムがなるまでの休み時間となっているらしい。



「んじゃね、雲雀!今日も残念でしたー」



タタッとかけていく先輩。
あ、委員長が怒りに震えてる。

またオレたち風紀委員かそこら辺の不良たちがとばっちりを喰らうんだろうなぁ……はあ。
これも、いつもの光景でいつもの心情。













チャイムが鳴るまでの戦争
(何時まで続くのかな?この賭け)