「今日は銃の特訓だぞ、ツナ。ボンゴレのボスになるんだったら銃くらい使いこなせるようになっとかねぇとな」
「はぁ!?じゅ、銃なんて使えなくていいよ!つか、ボスになんかなるつもりないって言ってんだろっ」



学校も休みで、家でのんびりごろごろしていたオレは唐突すぎるリボーンの言葉に抗議し、 いつも通り無駄な抵抗を試みた――けれど結局は無駄だった。
まあ、オレの意見が通ったためしはないんだけどさ……。

銃で脅され、並盛商店街の細いじめじめっとした誰も近寄らなさそうな路地へと連れてこられた。
一体何をやらせようというのだろうか、この赤ん坊は。



「ここだぞ」



パカッとマンホールのふたが外れ、中から出てきたのはなんと階段だった。
ま、マンホールの中に階段!?

学校の階段よりも急だけれど、意外にしっかりとした作りになっている。
なんか秘密の通路みたいだなぁ……。(や、実際秘密なんだろうけどさ)

そのまま中を下りていくと、銃声が響いていた。
―――この音が銃声なのだと区別できてしまう自分が悲しい……。



「お、もういるみたいだな」
「誰かいるの?」
「ああ、お前も知っている奴だぞ」
「ま、またマフィア関係者!?」
「うるさいぞ、ダメツナが。行ってみればわかる」



いーやーだー!と思わず叫ぶ。
……上からリボーンのドロップキックが降ってきたけど。 (おかげで最後の5段ほど転がり落ちる羽目になった。い、痛い)

だって、嫌なものは嫌なんだよな。
リボーンが連れてくる人たちには、まともな感性……というか常識を持った人がいたためしがない。
いつも苦労するのはオレばっかりなのに。



「ちゃおっス」
「あらリボーン、それに沢田も。チャオ。」
「ってさん!?」



意外にも広かった地下。
こんなところに射撃場なんかあったんだ…。いつのまに建設したんだか。

そこで一人銃を撃っていたのは顔見知りもいいところ、同じクラスのさんだった。



「な、なんでこんなところにいるの!?」
「なんでって……そりゃここがあたしの練習スポットだからよ」
「調子はどうだ」
「まあまあってところかしらね」



混乱する俺をよそに、リボーンとさんはふつーに会話している。 ああああ、もう!マイペース人間め!
思わず心の中で愚痴ってしまう。

ふと、今までさんが撃っていたであろう的が目に入った。



「穴が、一個しかあいてない……?」



30メートルほど離れたところに設置してある的に、ど真ん中に一個。
それ以外に穴があいている様子はない。

もしかして……全弾外れたのかな?あの真ん中のやつはまぐれ当たりってやつで。



「そんなわけねーだろ。は全弾ど真ん中に命中させたんだぞ」
「え?……はあ!?」
「大したことないわよ。的は静止してるし、距離もさほど遠くないしね」



さらりとさんは言っているけど、30メートルというのは意外に大きい。
それに、的の大きさだって50センチ四方(リボーンが言ってた)だから、相当なものだ。

全弾命中……しかも全部同じところに命中させるさんって一体……。



「それじゃ、あたしこの後用事があるの。ここら辺で失礼するわ、またね」
「チャオチャオ」



その後、さんさっさと帰ってしまった。
そのとき、リボーンがぼそっと呟くのが聞こえた。



「あの年でこの腕前……こりゃ何処まで上り詰めるか見ものだな」



滅多に他人を賛辞することのないリボーンの言葉、それは妙に耳に残って離れなかった。
本当に、さんは一体……













何処まで上り詰めるか見もの。
(将来どんな人間になるんだか…)