3ヶ月、俺は堪えた。

待った。
頑張ったんだ。
孫兵のために一生懸命頑張った。

天女様を見かけたら思わず殺したくなっちゃうから、我慢するためにひたすら天女様を避けた。
天女様の、あいつの気配を察したら直ぐさま孫兵を連れて逃げて、
天女様のことを喜々として話すような級友たちとはすっぱりと縁を切った。

おかげで少なかった友人がさらに少なくなっちゃったけど、まあいいや。
俺には孫兵さえいれば充分だもの。

幸せ幸せ。



* * *



そして3ヶ月。
夏の長期休みを経て、秋がきた!

実りの秋
読書の秋
食欲の秋
天女様を殺せる秋!

待ち望んだこの季節。
こんなにも秋がくるのを待ち望んだことなんて今までで一度もないよ。
なんと言ってももうすぐ天女様を殺せるからね。

いつがいい?
いつにしようか。

天女様を殺すのに邪魔をしてくるのは、きっと上級生の先輩方。
そうなると、実行するのは上級生が実習でいないときにしよう。
まだまだ俺の力では彼らに勝つことは到底不可能だから、見つからないようこっそりとね。

それにしても、あの先輩たちは何を考えているんだか。
みんなみんなみぃんな、天女様に恋してる。
天女様に夢中で、染まってる。
ギンギンも、いけどんも、変装名人も豆腐小僧も穴掘り少年も髪結いもみんなみんな天女様にくびったけ!

まったく、忍者の三禁は一体どうしたんだか。
色に溺れてはいけないって、そんなことは1年生でも知っているのに。
基本中の基本だし。

ああ、でも俺も孫兵のこと大好きだし、そういう意味ではあの人たちと一緒か。
骨抜きってやつだね!
他の人のことなんて言えないや。

でもあの天女様のどこがいいのかさっぱりわからない。

かわいい?
優しい?
温かい?

そんな人間、町に行けばいるじゃないか。
見た目と性格がいい人間がそこら中にいるわけじゃないけど、捜せばいるに決まってる。

純粋?
癒される?
守るべき存在?

わざわざ人間じゃなくたって、動物の方がよっぽど癒されるよ。
人間なんて煩わしいだけじゃないか。
純粋からは掛け離れた、どろどろしていて気持ちの悪い、醜悪な感情が秘められている。
それに守らなくちゃいけないだなんて馬鹿げてるね。

俺たちはいずれ卒業する身なのに。
天女様をずっと学園に置いておけるはずがないのに。

あ、もちろん孫兵は別だけどね。
俺は孫兵のことが大切だし、癒されるし、守りたい。
それを遂行するための覚悟だって出来てる。

だって俺は孫兵が大好きだもの!


さってと、考えもまとまったし天女様を町へお誘いしよう!
天女様が帰ってこなかったときに、誰も俺を疑うことのないように、こっそりと誘わなくちゃ。
だってもしもこの学園にいられなくなったら、孫兵とも一緒にいられなくなっちゃう。
それは困るからね。

でも誰にも見られないように天女様をを誘うのかぁ。

ううん、難しい。

だって天女様の周りには常に誰かしらがいるんだもの。
人気者だよねぇ、天女様。
どうしてみんなはあの天女様が紛いものと気が付かないのかな?
いつもあんなに近くにいるのに。
恋は盲目ってやつかな?

天女様が一人のとき……やっぱり寝てるときくらいかな?

あっそうだ!
いいこと思い付いた!
文をしたためればいいんじゃないか。
そうすれば誰にも見られる心配はないし、安全安全。
早速今夜にでも置いてこよう。

天女様は人気者だから、早くしないと予定が決まっちゃうかもしれない。

一緒に町へ行きませんか?
なんて、まるで恋文みたいだ。
孫兵以外にそんなことをするなんて、冗談じゃないけどしょうがないよね。
うん。
天女様、ちゃんと来てくれるといいな。



、楽しそう。なにかあった?」
「ふふふ、もうすぐ悪者退治をするんだよ」
「………?」
「退治しちゃったら、お祝いしような!」













僕は自分の弱さを認める