おい聞いたか?由香里さん帰っちゃったって!
えっ嘘!本当?
マジマジ。なんでも、光の粒になって消えたらしいぜ。
光の粒?ってことは本当に天女様だったんだなぁ。
な。あーあ、由香里さんともっと話しておけばよかった。
だね。残念だなぁ。



ってわけでなんか帰ったらしいぞ、藤本由香里。
まぁ俺としてはもうどうでもいいわけだが、俺の恋人はなんか心配そうな目で俺を見てくる。
どうやら藤本由香里がいなくなったことでもう用済み!とかって言われんのを恐れてるらしい。

心配しなくても俺が竹左ヱ門のそばを離れるわけないのにな。
もうあいつらのとこなんて行く気ないしー。
仙蔵たちは嫌いじゃないけど……やっぱり、な。
藤本由香里殺害未遂事件からなーんかぎくしゃくしちまってるし。
けどこいつがいるから、あんまり仲を戻そうって気にもなんねぇし。
ま、いっかーってな。

だから心配する必要なんかミジンコほどにねぇんだけど、うん。
でもま、こーいうとこが可愛いんだよなぁ。



「なぁタケもん、今度逢い引きしようぜ。逢い引き」
「逢い引きもなにも、毎日会ってるじゃないですか」
「こっそりと別々に学園を出て、町で合流すんだよ。一回やってみたかったんだ、逢い引き」
「まあ、そういうことなら……」



なんだか微妙そうな顔で見てくるハチえもんに、なんか嫌なのか?と首を傾げる。

せっかくのデートだってんのに嫌がるとは……まさか浮気か!?浮気なのか!?
3年目ならぬ3日目の浮気か!
ちくしょう、浮気が男の甲斐性だなんて俺は認めないぞ!
3日前に浮気はしないって約束したばかりじゃないか、ハチもんめ!
もう忘れたのか馬鹿もんめ!



先輩、その……」
「なんだ、八谷竹左ヱ門!俺は別れないぞ!」
「は?いやいや、オレだって別れたくありませんよ。そうじゃなくって」



浮気じゃないのか?
ふう、やれやれ。危うくヤンデレになるところだってぜ!
タケえもん、命拾いしたな!

浮気じゃないとするとなんだ?
……まさか、結婚の申し込みか!?
付き合い始めて3日でか?気の早い奴だなぁ。

いやいや待て待て、その前にここは日本だから同性同士の結婚は出来ないぞー?
ちゃんとわかってるよな、さすがに。
それともあれか?そんな決まり、俺たちの愛の前には関係ねぇぜ!ってか?
うっひゃあ、カッコイイなぁ!
惚れちまいそうだぜ!

もう惚れてっけど。



「で、式はいつ挙げるんだ?」
「え、式?」
「挙げないのか?」
「何の話ですか。あの、そうじゃなくてですね」



なんだ、結婚式の話じゃないのか。

じゃあ一体なんだっていうんだ?
いくら相思相愛だからって、以心伝心はまだ無理だ。
ついでに熟年夫婦のような阿吽の呼吸も無理だ。
目指してるけどな。

ってわけではっきり言ってくれ!



先輩、名前……」
だが?」
「そうじゃなくて、オレの名前、普通に呼んでくれませんか?」



その言葉に目をぱちくりとしばたたかせる。

なんだ、そんなことか?
確かに今まであんまりまともに呼んでなかったけど。
だっていろんな名前で呼ぶの面白かったし。
けどそんなこと気にしてたのかー。
可愛い奴め。

ふふん、それならば君が愛を込めて呼んでやろうじゃないかー!



「八左ヱ門」
「っ、はい!先輩!」



はにかみながらそう返事する八左ヱ門は、めちゃくちゃ可愛いかったです。













好きすぎてどうしよう