は、俗に言う変態であった。



「おっ、久々知に竹谷。出掛けんのか?」
「はい、ちょっとお使いに」
「オレは委員会で必要な物を買いに行くんです」



七月某日、は門の前で後輩二人と出会った。にこやかに話し 掛けると、それに答える久々知兵助に竹谷八左ヱ門。出掛ける二人 はもちろん私服であり、出門表に記入をし、いざ行かんとばかりに町へ向 かうところであった。対するは両手に教材が抱えられている。は組 の学級委員長である彼のことだから、おそらく教師に頼まれたのだろう。 は手を塞がれたまま、私服姿の後輩を纏わり付くような視線でじっ くりと眺めた。特に足を。そのまるで視姦するかのような目付きに、思わ ずたらりと冷や汗を流す兵助と八左ヱ門。やばくないか?これ。ああ、い つものパターンだ。



「なぁ竹谷、お前の私服はセンスがいいな」
「そ、そうですか……?」



あれ、なんかおかしくね?オレ褒められたんだけど。油断するなよはっち ゃん。何をされるかまだわからない。小声でぼそぼそと会話する二人をま ったく気にせず、荷物を抱えたままは近寄って来た。それを認識し た二人は思わずびくりと身体を震わせる。顔には早くここから立ち去りた いという文字がありありと表れている。けれど逃げようとしないのは、 が年上だからだろう。年功序列の意識が染み付いたこの学園では、よ っぽどのことがない限り後輩は先輩を敬う。このという男も ある一点を除けば、成績優秀の頼りになる先輩なのだ。勉強面にて世話に なったことのある二人は、逃げ出したくとも逃げられない。やばい、オレ らピンチじゃね?



「竹谷!」
「はいぃっ!」
「お前はけしからん奴だなぁ!こんな短いのを履きやがって、お前は女子 高生か?女子高生なんだな。ちくしょう綺麗な足しやがって……その筋肉 の付き方が大好きだ!触っていいか?触っていいよな、じゅるり……ああ 、安心してくれさすがに舐めたりしないから。そう怯えるな、触るだけ触 るだけ。ほお擦りしていいか?……ははは、いやいや冗談だよ。そんな顔 すんなって。あ、でもめくるぞ。ふんどしが見えるくらいまでめくるから な?もっと俺に足を見せてくれ!そのいい感じに筋肉のついた足を付け根 まで!なぁに、袴まで下ろそうっていうんじゃない。な、いいだろ?よっ しゃ、サンキュー竹谷!お礼にお前のランキングアップしといてやる。美 脚ランキング11位から9位に浮上だ!嬉しいだろう?あ、おい久々知! お前その袴はなんだ!露出度ゼロじゃん!お前はお嬢様学校の生徒か。聖 女学院か!もっと足出せよー、足。暑いだろ?なんなら俺の持 ってる袴貸してやろうか?大丈夫、俺は一度も履いてないやつだから。プ レゼント用の特別品だぜ?お前のその絹ごし豆腐のように白くて滑らかで 艶やかな足にはきっと似合う!俺が保証してやるよ。だから足を見せろそ して触らせろ。いいからいいから。うひひ。なんも怖いことなんてねぇん だぞー?俺にすべてを任せてくれればいい。その身を委ねるんだ。ははは 、さぁ早く!」
「せ、先輩!」
「ん?どうした」
「オレたち急いでますんで、失礼します!」
「袴のプレゼントはお断りしておきます!」



ケツやら足やらをべたべたと遠慮なく触っていたに早口でそうまく し立てると、脱兎の勢いで二人は門をくぐって出て行った。ああ、俺の足 がぁ……などと呟きがっくりとうなだれる。だが追い掛けようとし ないのは、自身があまり実技を得意としていないのを認識しているからだ 。どうせ追い付けない。ついでに教材もまだ届け終えてないし。 は変態であったが、責任感は強い男であった。今日も彼は足を愛で続 ける。













その男に警戒すべし