は自身のお気に入りの足と遭遇した。



「よ、仙蔵。奇遇だな!」
「……か」
「女装なんかしてどうした?実習か?」
「ああ、い組は今日が実習だ。お前のとこには来週辺りにあるんじゃない のか?」
「たぶんな。……ところで仙蔵」



今まで爽やかに笑っていた表情がが急に真面目なものへと変わり、立花仙 蔵の上から下まで完璧としか言いようのない女装をしげしげと眺める 。今日は実習ということなのでさすがにいきなり足を曝させるという暴 挙に出ることはなかった。変態であるが嫌われない理由その1、T POはわきまえる。とりあえず授業の妨害をしてはならない、という分別 は備わっているようだ。だがしかし、妨害はしないが自重もしなかった。 つまりは趣味をさらけ出した。



「なあ仙蔵、足は出さないのか?あしー。そんなピシッと貴族風にキメて たら男共は寄ってこないぜー?手の届かない高嶺の花は見るだけで終わっ ちまうだろ。ここはやっぱり足出して、な?その方が男にとっては手の出 しやすい女に見えるってもんだ。ばばーんと出そうぜ!大丈夫、お前なら 女装中であっても平気だ。他はすね毛あったり筋肉の付き具合でバレるけ どよ、お前なら大丈夫だ。立派な女だよ。ひゅーひゅー!お仙ちゃん足が 綺麗ね!羨ましいわ!ってわけだから、な?これはお前のために言ってん だ。……俺のよこしまな気持ちなんて一切入ってないからな!か、勘違い すんなよっ!」



一方的に語ったがツンデレ風に締めくくったのを見ると、仙蔵はた め息を一つ吐いた。悩ましげなその吐息を出す姿は端から見れば艶かしく 、男とわかっていてもうっとりと見惚れそうなものだった。しかし は、頬を染めたりすることもなく言葉を続けている。まだ続けるのか、お 前は。それでも仙蔵が立ち去ろうとしないのには理由があった。変態的な のこの台詞の中には、確かに実習を行う上で参考になりそうなこと が混ざっているのだ。足云々は置いといても「気位の高そうな女に男は手 を出しづらい」というのには一理あった。仙蔵の女装は確かに学園一美し いが、実習の結果は必ずしも1番であることはない。むしろ、1番になる ことの方が稀である。それはなぜか。実習内容にもよるが、女装はたいて い諜報に用いたり敵の目を欺くための手段である。つまり、どれだけ多く の人間と会話することができるかや、警戒心を抱かせずに情報を引き出せ るか、いかに自然に町人に溶け込めるかが重要となってくる。そういった ことを考慮すれば、仙蔵よりもの方の成績が良いことがままあるの も頷けるだろう。



「それでだな仙蔵。……おい、聞いてるか?お前にぜひとも履いてほしい ものがあるんだ。知り合いの南蛮商人から貰ったんだ。誰に履いてもらお うかと一週間ほど悩んでいたが今決まったぞ。そうだ、お前が履くんだ仙 蔵!お前ならきっと似合う!お前に似合わなければ一体誰に似合うという のだ。似合わないわけがないっ!さあ今すぐに履け!この、バニーガール を!ああそうか、初めて見るものだからどんな風に履くかわからないか? 大丈夫だ。俺が手取り足取り腰取りじっくり教えてやる!その時に足に手 が触れても問題ないよな。だって履くもんだぜ?触らないといけないもん な!うへへへ。さあ早くその着物を脱ぎ捨てるんだ仙蔵!早くしないと実 習が始まってしまうぞ?急げ。なんなら俺が手伝ってやろう!なに、遠慮 することはない。俺とお前の仲じゃないか。さあ!さあさあさあっ!」



手をわきわきとうごめかせながら着物の裾に手をかけるを無表情に 見ていた仙蔵は、再びため息を吐くとその頭にげんこつを一つ落とし去っ て行った。後に残るは頭を押さえて悶絶しているだけだった。













対処なんて慣れたもの