は愚痴っていた。



「でね、その某後輩はいつも俺を追い回すわけですよ。追い回されるだけだったら俺もそこま で必死にならないんですけど、そいつ、何したと思います?袴を脱がしてきたんですよ!俺の 純潔が奪われた!死にさらせ!当然逃げるでしょう?で、また追いかけられてるんです。まさ にエンドレス。まあでも、今までそれなりにいい子だったんです。あいつもね。出来た後輩っ てやつです。頭も良いし、忍術の腕もトップクラス。学級委員長委員会の仕事もそれなりにこ なすし、後輩にだって慕われてしるようだし。まあ、人をおちょくるのはいただけないけど… …っと話が逸れました。肝心なのはそこじゃないんですよ。なんであいつが俺を追い回してた かです。何でだと思います?わかりませんよね。俺だってついこの間までわかんなかったです もん。実はですね、あいつ……俺のことが好きらしいんですよ!ぶっちゃけ告白されましたき ゃあ言っちゃったやだもうはーずーかーしーいー!つまり追い回してたのはあいつなりのアプ ローチだったというわけです。ええーって感じですよね。アプローチの仕方が幼稚過ぎるって の。てかいくつだよ。……まあそれはさておき、俺どうしようかと思ったんです。そりゃあい つのことは好きですよ?可愛い後輩ですもん。当たり前ですよ。でもですね、そーいう意味で 好きかと言われると微妙なんですよね。だって恋仲になるってことはあれですよ、そういうこ とですよね。まぐわったりとか自然の流れですよね。俺ら年頃だし男の子だし。それを考える とですね、正直無理っていうかやっていける自信がないんですよ。別にあいつが無理とか生理 的に受け付けないとかそういうんじゃなくって、男ってことが無理なんです。なんで無理かっ て?衆道がダメとか潔癖症とかそういうんじゃないんですけど、その辺りは察してくださいよ 。トラウマってやつですよウマシカ。で、ですよ。告白された時にその旨を伝えたんですよ。 そしたらなんと逆ギレされました。逆ギレですよ?理不尽でしょう。男の足見て喜んでるくせ に、男ダメとかどういうことだーって。意味わかんないですよね。ダメなもんはダメだっての 。それよりも男の足見て喜ぶとか、その表現が変態みたいで嫌だし。俺はただの足フェチだっ ての。あ、そうそう、それで本題なんですけど、俺告白を断ったにも拘わらず未だにアプロー チされまくってんですよね。てか追い回されてるだけですけど。いやぁ、このタイミングで学 園に来てくれて助かりましたよ。あいつ、ここのところ俺が誰かと一緒にいたりするだけでど こからともなく現れて、俺のこと邪魔するんですよ。今日はあいつ、ってか5年が実習なんで すよしかも3日間天国ひゃっほう!で、俺って告白の返事どうしたら良いんですかね。いや一 回断ってるんですけど。もっとこっぴどく振っちまえばいいんですかね。殴りつけるとかして 。いやいやでもそれってすごく良心が痛むっていうかできそうにないっていうか……それより もいっそ付き合った方がいいとか?いやいや、それこそ無理ってもんですよ。何より恋仲なの にまぐわうこともできないとか可哀相ですよ。だってお互いまだ性少年。だからここんとこ夜 しか眠れないくらい俺悩んでるんですよね。どうしましょう。よければ良いアドバイスとかくれませんか?―――利吉さん」



山田利吉は今日の自分のタイミングの悪さを呪った。いや、どうせは組のトラブルに何かしら 関わったりするからそれは今更なのだけれども。とにかく、今まで愚痴ともつかぬ相談を延々 としゃべっていたに言いたいことは山ほどあれど、吐きたい溜め息をぐっと堪え、ひとこと言った。



「自分の気持ちに、素直になりなさい」



は組で鍛えられた我慢強さは伊達じゃない。













どっちがどっち?