幼稚園、小学校、中学校、高校、大学。なんでか知らないけど、いつもは一緒だった。
家はスキップして3分。大学生になってからはルームシェアしてたから、歩いて3歩。
いつでも、どんなときでもは近くにいた。

だからほんとのこと言うと、オレは今の状況がまだ何となく落ち着かない。むずむずする。痒いとこに手が届かない感じ。
に会いたいかっていうと、別にそうじゃない。会えれば嬉しいけど、いなくても平気。痒いだけ。もちろん寂しくもない。
だってざっとーさんやそんなんくんたちタソガレドキのみんながいるしね。

それでも物足りなく感じるのは……きっとのコロッケを食べてないからだ。

パン粉って、どこで手に入るのかなぁ……。



「伊織、ちょっと町に行って買って来てほしいものがあるんだが」
「ええー、部下の人に言えばー?」
「お前がその部下だろう。いいから行ってこい」
「釣りはいらねぇ、とっときな!」
「ん?……ああ、しょうがないな」
「パン粉買ってくる!」
「買うのは判子じゃなくて金平糖だ」
「こんぺーとー……」
「殿の新し物好きにも困ったものだよな」



おお、金平糖か。たしか大前屋で売り始めたって聞いた気がする。
オレは金平糖よりも煎餅派なんだけどなー。

茶菓子なんだから侍女さんに行ってもらえばいいのに、って文句言ったら、今日はマコモダケの若様が来るから侍女さんたちはその準備で忙しいんだって。
ちぇー。オレ今日休みなのに。


忍装束から普通の町人の格好に着替えて城を出た。



「るんたったーるんたったーちゃららららー」
「おう坊主、ご機嫌だな!」
「おうさー!」
「さては女か?どうだ、贈るにゃぴったりの簪があるぞ!」
「あは、オレ簪よりもめざしの方が好きだからー」



またね!大前屋まであとちょっと、スキップステップるんたったー。飛んだり跳ねたり回転してみたり。
「普通に歩け、ぶつかるぞ」なんての声が聞こえた気がするけど。残念、オレは走り出したら止まらないのさ!

とんっ。



「おっと、すみませぬ」
「はぁ!?」
「うん?」
「この俺様にぶつかっておいて、そんな適当な言葉で済むと思ってんのか!」



ん、なになに?なんかオレいけないことした?うんにゃ、してないね。ぶつかったのはちゃんと謝ったし。
つか、こんな漫画みたいな奴ほんとにいるんだねぇ。

こういうのはスルッとスルー!したいのに、袖を掴まれて引っ張られた。



「なに逃げようとしてんだよ!」
「だってオレ、謝ったし」
「その態度が気にくわねぇってんだよ餓鬼が!」
「えー、りふじーん」



オレはいつだって真面目一直線なのに。
ていうかこんなのに礼儀正しくなんてしたくない。

どうしよっかなー。売られた喧嘩は値引きされてから買うけど、目立つことをするな!ってこーさかさんに言われてるし……。
でも逃げるのはなんかムカつく。はてさて、うむむ。



「伊織、なにをやってるんだ」
「あ、そんなんくんだ。サボり?」
「仕事中だ!」
「おぅ、お前こいつの知り合いか」



かわりに落し前つけてもらおうか。なんてセリフを吐いたきんぴら……違った、チンピラ。イマイチだなぁ、20点。
そのイマイチなセリフでだいたいの事情を察したらしいそんなんくんは大きなため息を吐いた。ため息つきたいのはこっちだよ。



「まったくお前は阿呆なことばかり……ほら、帰るぞ」
「こんぺーと買ってくるからちょっと待っててー」
「あっ、おいテメェ!」



なにやら騒いでるきんぴらさんをそんなんくんに任せて、店の暖簾をくぐった。
頼まれてた分量をおじいさんに包んでもらって外に出たら、きんぴらさんがまだ喚いてた。
えー、てっきりそんなんくんがちょちょいとやっつけてると思ってたのに。

しょうがないからこっそりときんぴらさんの背後に近付き、巾着袋を振りかぶった。
そいやっ。

ガスッ



「っ、てんめぇ何しやがるんだ、ああ!?」
「ありゃ、間違えた」



巾着袋はポッケだった。
こんぺーとで殴っちゃ痛くないよなぁ。しかもちょっと砕けちゃったし。……ま、いっか。ちゃんとやっつけとかなかったそんなんくんが悪いということで。
しょうがないから殴り掛かってくるきんぴらさんにカウンターで肘鉄砲。こうかはばつぐんだ!
きんぴらさんが呻きながら倒れたのを確認して、スキップしながら逃げ出す。
後ろにそんなんくんの姿を確認したので文句を言ってみた。

なんでやっつけてなかったのさー。



「そんな目立つ行為、忍がしていいはずないだろう」
「あのまま放って置く方がよっぽど目立ってたし」



喧嘩だ喧嘩だって大勢集まってきてたじゃん。
喧嘩が華なのが江戸だけだと思ったら大間違いだ!って言ったらそんなんくんがえど?と首を傾げてた。



「そんなんくん」
「なんだ?」
「サボり?」
「っ、しまった!」



慌ててUターンして町へ戻って行った。なんの仕事だったんだろーね。

オレももう用事は済んだからそのまま城に帰ってこんぺーとを侍女さんに渡した。
あんまり割れてなかったってさ。そんなんくん、怒られなくてよかったねぇ。













ノーカウント