レオリオの友達、つまりゴンさんキルアさんクラピカさんが来てから4日が経った。

もう4日。
このところ時間が流れるのがすごく速い気がする。
いつまでも続けばいいのにって思ってるのに、気がつけば終わってる。
楽しいことが過ぎ去るのはあっという間だ。

でも、3人とも最低10日間はいると言っていたからまだ時間はある。
最近は毎日がすごく楽しみだ。
ベットに入るたびに、早く明日が来ないかとワクワクする。なんかはしゃぎすぎかも。

オレはあれからいろんなことを3人(ついでにレオリオからも)聞き出した。
ハンター試験の内容、仕事の種類、その内容、貴重な動植物について、九死に一生を得たという体験。
どの話もスリルやユーモアが溢れ出す程にすごいものばかりだった。
オレはそれに食い入るようにして聴き入っていた。きっと目はキラキラと輝いていたことだろう。

もちろん、話を聞いていただけじゃあない。
せっかく現職の、しかもプロのハンターが4人もいるのだ。(レオリオのことは未だに信じ難いけど)
戦い方だって教えてもらっている。それにハンターとして必要な知識も。
覚えることは山ほどあった。
本当にこんな知識が?ってやつも、沢山。

そして今日は実地訓練だ。
今までは模擬戦とか講義だったけど、今日は山に入って修行するらしい。
クラピカさんがわかりやすく説明してくれる。



「いいか、山には多くの罠が仕掛けられている。お前にとっては身近な遊び場かもしれないが、油断してると怪我じゃすまない」
「はい!」
「その罠をくぐり抜け、頂上の祠にたどり着けば無事終了だ。なにか質問は?」
「ありません!」
「よし、じゃあ頑張って行ってくるといい」



はい!と勢いよく返事して、オレは山へと駆け出した。

山はオレの遊び場。小さい頃から駆けずり回ってたから、どんなところに何があるのか自分の部屋のようによく分かる。
もちろん、頂上にある祠のことだって。

祠には、当然のことだけど神様が奉られている。
確か「サーザダイムーオ」だったかな?10年に一度のお祭りの時に奉納される、山の守り神みたいなもんらしい。

ま、それはおいといて、オレが今走っている山はそう大きくない。
麓から頂上まで1kmくらいの高さだ。
そのかわり、生えている木の数や棲んでいる動物たちの種類は多い。
至るところから生えている木は一見無秩序だけど、実はある一定の規則を持って生えている。

オレが今走っているのは、その規則性のある木のひとつ。
ワカタイクシボクは背が高い割に枝がとてもしっかりしている。
どのくらい丈夫かって言うと、オレがその上を跳び移りながら走っても平気なくらい。
地面を直接走るより、こっちの方が罠が少なくて安全かな?って思ってたけど、甘かった。
丸太が飛んできたり、着地した枝に樹液が塗ってあって滑ったり、見えないくらい細い糸が張ってあったり。
本当に、ちょっとでも気を抜くと大変なことになりかねないものばかりだ。

それでも死ぬ危険性のある罠がないのは、たぶん山への配慮。
熱帯雨林とかならともかく、こういう山は人の手の影響を受けやすい。
だからこんな罠しか仕掛けなかったんだと思う。


罠のせいでいつもよりもだいぶ時間がかかったけど、なんとか頂上の祠までたどり着くことができた。
けど、



「ゴンさんもキルアさんも、見当たらないなぁ……」



頂上で待ってるって言ってたのに。

辺りの気配を窺いながら祠の横に寄り掛かる。
ま、まさかいきなり飛び出してきたりしないよな……?
キルアさん辺りがしてきそうな気もするけど。いや、するな。

それから10分、いつ来るのかとビクビクしていたけれどいっこうに現れる様子がなかった。
怪しく思ったオレは、歩きながら考えた。
どうしたんだろう。なにかトラブルに巻き込まれた、とか?
いやいや、あの2人ならサクッと解決しそうだ。
じゃあなんだろう?

考えながらうろうろしていたら―――地震が起きた。



「うわ、わわわわっ!?」



揺れがものすごく大きい。まるで山が命をもって暴れてるみたいだ。
あまりの揺れに立つことすら許されず、オレはたちまちバランスを失い後ろへと倒れ込んだ。

ら、そこは祠だった。
薄暗い祠の中で揺れがおさまるのを待っていると、暫くして山は普段の静けさを取り戻した。

びっくりしたなー!あんな地震、今まで体験したことないよ。
いったい震度どのくらいだったんだろ。



「あ、レオリオ大丈夫だったかな?」



ゴンさんたちは凄腕のハンターだからきっと平気だったろうけど、レオリオはどうにかなってそうだ。
あと村も心配だし……一回戻ろうかな?
祠の祭壇も倒れ込んだせいでちょっと壊れちゃったから、後で村長に謝らないと。


祠を出た後に急いで山を下っていけば、しばらくして村が見えてきた。
よかった、見たかぎりじゃ倒壊とかはなさそうだ。



「あ、村長!」
「……誰じゃ?」
「オレ!!」
……?」



怪訝そうにオレを見る村長に、ふと違和感を覚えた。
なんだろ、なんかいつもと違うような気がする……。



「……は、まだ3つぐらいだったと記憶しておるが?」
「えー、村長そりゃないよ!オレもう15だぜ?……ボケた?」
「ボケとりゃせん!儂はまだ若いわいっ!」



………あ、そっか。なんかおかしいと思ってたら、そうだ、村長が若いんだ。
髭が15センチくらい短いし、しわもまだそんなにない。

でもなんでだ?
戻って来たら村長が若返ってただなんておかしすぎる。
確かに村長に会うのは3日ぶりくらいだけど、その間に整形してイメチェンってのはありえないだろうし。



「なぁ村長、レオリオってどこにいるかわかる?」
「レオリオとは誰じゃ」
「もう、村長ほんとにボケた?レオリオだよ、老け顔の医者!」
「そんな奴なんか知らんわい!年寄り扱いしおって!」



ううん、なんか話が通じない……。
やっぱり村長、おかしいよな。
オレのこともレオリオのこともわかんないなんて。
記憶喪失?……んな訳ないよなぁ。

そんなことを考えていると、雑貨屋のエドガーさんが小走りにやって来た。



「村長!今年のサーザダイムーオ、神人役はオルツィの奴でよかったですよね?」
「ああ、そうじゃ。なにか問題でもあったか?」
「あ、いえ。クリスティーの奴に衣装作るからオルツィで間違いないかどうか確認しろって煩くて」
「そうかそうか、あと1ヶ月で祭りだからの。頑張るように伝えておいてくれ」
「はい、村長。それじゃ」



……おかしい。サーザダイムーオは去年やったはずなのに。
今年もまたやるなんてありえない。
それにクリスティーさんは妊娠で入院中のはずだ。
何より、エドガーさんも若かった。

それらから考え出せる答え。
つまりここは―――過去の世界。

……あれ、オレもしかしてタイムスリップしちゃった?













セカンド・バタフライ
(え、まじですか?)