目が覚めたら赤ん坊になっていた。はいはい、テンプレ乙。
いきなりっちゃいきなりだったが、オレは大した動揺することもなく目の前のおっぱいにしゃぶりついた。あーウマ。

ここで確認。
眠りにつく前のオレはれっきとした成人男性だった。職業?自宅警備員。
寝て起きたら赤ん坊なんて、まるでどこぞのネット小説のごとく怒濤の展開だが、まあ食っちゃ寝生活なのは変わらんから良しとしよう。

で、何週間かしてぼやけてた視界がハッキリ見えるようになった頃、オレはあることに気が付いた。




かーちゃん、オーラ纏ってる。




ちょい待て、オーラて何?ここはあれか、少年漫画の世界か何か?オーラで系統とか属性とかわかるのか?マジか。
てことはオレも能力に目覚めてるってことか。オーラが見えんだし。チートですか。オレTUEEEEですか。はいはい、テンプレ乙。




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3ヶ月目にして新事実判明。このオーラ、別に能力とかじゃなかった。
どうも感情を示してるっぽい。色別で。
観察時間が短い上に、対象がかーちゃんくらいしかいないからまだ確証はもてないが、たぶんそうだ。
つーか感情がわかるだけとか微妙だ。感情がわかったからって何をしろというんだ。人心掌握?NAISEIですか。伸し上がれってか。はいはい、テンプレ乙。




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それから3年が経った。

他の村人と接していくうちに、オーラは感情を示しているということが確定した。
あ、あとオーラ出してんのは人間だけじゃなくて、動物も同じの様だった。近くで出没するタヌキとかスズメとかヘビとかもいろんな色をしている。
さすがに虫は知能が足りないのかオーラは出してねぇけど。

とにかく、オレの視界はわりとカラフル。
でだ。オレの周りって子どもがあんまいないんだわ。たまたまそういう世代なのか、同い年はもちろん、年上で1番近いのは9歳の奴だし、年下もいねぇ。
ま、どっちにしろ今さら3歳児に混ざって遊ぶなんざ御免なのでオレとしてはありがたいが。

そんなわけだからオレは村の人間とは遊ばずに動物とばかり遊んでいた。こっちのが面白かったしな。
なんといっても感情がわかるんだ。最初は警戒してる動物も次第に慣れてくるってもの。
いやー目茶苦茶楽しかったね。動物と心通わせる少年とか、時代が時代ならオレテレビに引っ張りだこだったろう。

しかしまあ浮かれていれたのも最初だけ。動物たちと戯れるオレの姿は、天才少年ではなく異端児として村人の目に映ることとなる。
そっからは説明せずともわかるだろう?あっという間に村八分の完成だ。はいはい、テンプレ乙。


でもな、やっぱり村八分ってオレだけじゃないわけだ。
いや、対象はオレだけだが、その産みの親たるかーちゃんまでもがとばっちりを受けた。あ、ちなみにとーちゃんはいない。戦で死んだってよ。
オレとかーちゃんは村の隅に追いやられ、他人と接しなくなったオレはますます動物たちと遊ぶようになった。
そして白い目で見られるようになる。さらにぼっち。なにこれエンドレス。

かーちゃんといえば、オレが原因で村八分にされたっていうのに
「子どもっていうのはね、親に迷惑かけて生きてくもんなんだよ。気にすんじゃないよ」
と笑いながら言っていた。かーちゃん、漢前だ……!

けれど、村八分にされながら女手一つで子どもを育てるには限界があったらしい。
もともと身体が強くないかーちゃんは、倒れてそのまま帰らぬ人となった。ショック!
……いや、あのほんとはそんな一言で片付けられるほどあっさりはしてなかったけどね?
一日中泣きまくったし、村の奴らに呪詛吐きまくったし、いっそ自殺でもしようかとか、まあいろいろあったわけだけど、
そんなドロドロしたとこ語ってもしょうがないのでそのあたりは割愛するわ。


で、9歳ん時にかーちゃんが死んだんだけど、その時の遺言が「忍術学園へ行って強くなりなさい」だった。
まあこのご時世、天涯孤独で生きていくのに強さは必須だしな。
漢前のかーちゃんはへそくりだってしてた。入学金と何年分かの学費。
これだけ用意してたってことは、最初からオレを学園に入れるつもりだったのだろう。
これを見た時、かーちゃんに文句を言いたくなった。これだけのお金があれば医者を呼べたのに、って。
かーちゃんに無理をさせていた自分が不甲斐なくて、また一晩くらいうじうじめそめそしてたけど、まあそれも割愛。





そんなわけで現在に至る。





オレ、10歳。今日からピッカピカの一年生です。友達100人でっきるかなー。













有為転変は世の習い