「サクラちゃーん、今日からアカデミーでしょ。早く起きなさい!」
「ふぁーい」



そんなこんなで、月日が経つのは早いもの。
あたし、改め春野サクラは今日から忍者の卵、略して忍たまです。(ジャンル違う)


5歳になりました。


いやーここまでの道のり、長かったわぁ。
なんせ成人女性が赤ん坊からやり直すんだからね。
ええもうそれは大変でしたもの。

何が大変かって?今はもう大丈夫だけど、排泄。
これが一番の強敵だったわ。
なんせ全ての生き物における生理的衝動だもの、どう頑張ってもこればっかりは避けられようがないわ。
確かに見た目は赤ん坊……もとい、赤ん坊。
頭脳は大人のコナン君も真っ青の大変身を遂げたサクラちゃんよ?
でも所詮は赤ん坊。

後始末もできないのよ!

自分で処理できないもんだから、もう惨めで情けなくて湿るおしめは気持ち悪いし……。
介護してもらうお婆ちゃんの気分と、おねしょをする子供の気分を一度に味わうことができたわ。
一粒で二度おいしい!みたいな感じ。
全然おいしくないけど。

――――所詮赤ん坊の体と割り切れなかった自分が悲しい。
ほんと、何の拷問かと叫びたくなるくらいだったわよ。
うわぁああん!
まあ実際に排泄した後は毎回盛大に泣き叫んでたけど。


もう一つはアレね。
お風呂タイム。
入れてもらうことについては何の抵抗もなかったんだけど、
(なんだかんだ言っても他人に全てやってもらって入るのは楽だし気持ちが良いしね)
父親と一緒に入るのはやっぱり……ね?

そりゃ、あたしだって小さい頃は父親と一緒にお風呂に入りはしたけど、それも小学生まで。
さすがにこの歳(精神年齢2x歳)になってまで父親と一緒に入るつもりはないわ。
しかも、の目から見ればまったくの赤の他人。
だから必死に抵抗したの、泣き叫んで!

……まだ喋れないからその抗議はあっさり無視されたけど。
というか、ただのお風呂嫌いだと認定されたわ。


「大丈夫でちゅよ―、怖くありませんからね―」


ってサツキさん(まだお父さんとは呼べない)の似合わない赤ちゃん言葉を聞きながらお風呂に入れられたものだ。
ていうかこの人、結構子煩悩だったのよね。

他に人がいると、見栄を張っているのかひたすら眉間にしわを寄せて威圧感をバリバリ出してる怖いオッサンだけど、
一度あたしと二人だけになればその顔はデレデレの、端から見ればちょっと怪しい子煩悩パパに変身だ。



まあそれはされおき、様々な困難を経てあたし、
はめでたくアカデミー入学を果たしたのであった。
めでたしめでたし。


―――で、終わらないのが人生だ。


なかなか思い通りには進んでいかないものね……。
あたしは今、入学して早々にイジメを受けている。

みなさんご存じだろうか?
春野サクラといえば……そう、おでこだ。前頭部。
全国のお父様方のハゲ具合がわかるという、あのおでこだ。
生え際のご相談はアートネ○チャーへ。

かくいうあたしも、おでこを出している。
一応チャームポイントでもあるし。
だから髪が顔にかからないようにリボンで纏めておでこ全開だ。
そのおかげか、ただいまイジメの真っ最中。



「やーい、このでこ!」
「でーこりん!」
「……………」
「なんとかいいなさいよ、このブス!」
「ちょーしにのってんじゃないぞっ」
「……………」



うん、何というかその……ね?
ぶっちゃけど―でも良いっていうか、そんなこといわれても痛くも痒くもないというか……。
こういう場合はどう対処すればいいのかしら?

怒る?
いやいやでも5歳の子相手に本気になる2x歳って……。

泣く?
いやいやでも5歳の子相手に…以下略。



「こらぁ!あんたたち、サクラになにやってんのよ!」
「げ、イノがきたぞ!」
「にげろっ」
「もう、あいつら……だいじょうぶ?サクラ」
「う、うん。大丈夫。ありがとう、イノちゃん」



颯爽とヒーローの如く現れ、どう対処すべきなのかと考え拱いていたあたしを助けてくれたのは、
アカデミーで知り合ったイノちゃんこと山中イノだった。

ていうかこんな小さい子
(だって精神的にはあたしの方が上だし)(見た目はあたしのが小さいけど)に庇われるなんて、情けなさ過ぎて涙が出てくるわ……。



「ほらサクラ!そんななきそうになってちゃダメよ。おんなのこはわらわないと!」
「ん……ごめんね、イノちゃん」
「あやまらなくてもいいわよ」
「ありがと、イノちゃん」
「どういたしまして」



そんなこんなで、ただいま第二の人生を大いに楽しんでます。













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